Story
開発秘話
モノって、なぜ散らかるんでしょうね。モノって、なぜ片づかないんでしょうね。
ときめくか、ときめかないかで「捨てる」「残す」を区分けできる私物と違って、お仕事の書類や小物は捨てたくても捨てられず、上手く付き合っていくしかありません。整理整頓が苦手なみなさん、どうされてますか。職場で煙たがられていませんか。
誰でもデスクが片づき、仕事に集中できるワークツール「WORKERS'BOX」を発売するにあたって、ハイモジモジの松岡と松田が「なぜそれをつくったのか」を語り明かしました。
ほんと、この商品をつくるまではわたしたちも「お片づけ問題」が切実だったのです。
ハイモジモジ代表。ライター。「WORKERS'BOX」の販売・広報担当。どちらかと言えば几帳面。白と黒のモノトーンが好き。
グラフィックデザイナー。「WORKERS'BOX」の開発担当。モノを片づけるのは苦手だが、要らないものはすぐ捨てる。
【第1回】なぜモノは片づかないのか
【第2回】だからボックスをつくった
【第3回】自分自身が欲しかったから
【第4回】開いて閉じて、しまうだけ
【第5回】なぜ紙製にこだわったのか
【第6回】そして書類の住所ができた
松岡です。
松田です。
開いて、閉じて、しまうだけ。「WORKERS'BOX」の仕組みはよく分かりました。
カンタンでしょ。
Macの「デスクトップを複数作れる機能」にも近いのかな。横にスライドさせて画面を切り替える、みたいな。
え、そんなことできるの?
トラックパッドで3本指をスライドさせるとできるよ。
し、知らなかった。わたしの方がMac歴長いのに。
画面をスライドさせると気分もガラッと切り替わるから、次の仕事のスイッチが入りやすくなるよ。それこそプロジェクトごとに画面を分けたら便利。
こんど試してみよう。とにかく「プロジェクトごと」に分けるのは、アナログでもデジタルでも便利ってことだよね。
ところでこの「WORKERS’ BOX」だけど、なんで紙製なの? 別の素材でも作れたような気もするけど。
紙じゃない方がよかった?
そうじゃないけど、紙って見くびられがちやん? 実は他の素材よりも意外にコストがかかっていたりするのに「なんだ紙か」って思われやすいというか。
紙もピンキリなんだけどね。あきらかに安っぽい紙もあれば、もはや紙と呼べないようなテクスチャーの特殊紙もある。
結婚25周年を銀婚式って言うでしょ。あれって1周年から呼び名があって、金とかエメラルドとかプラチナとかいろんな素材の名前が安い順に付けられてるんやけど、なんと一年目は「紙婚式」なのよ。紙が一番安いんかい、とは思ってた。
金属に比べると、まあねえ(笑)
これを命名した人に訊きたい。「紙はそんなに安いですか」
紙業界の人だっけ?
違うけど、この場を借りて代弁してみました(笑)
わたしはとにかく紙の質感が好きなんだよね。指先に手触り感があるじゃん。好きな紙はずっと触っていられる。
プラスチックのケースじゃテンションが上がらない、って言ってたね。
そう。やっぱり好きなんだよ紙が。見た目も含めて。
個人的な好みで今回は紙製にこだわった、と。
もちろん、ちゃんとした理由もあるよ。紙って、気軽にペンで書けるじゃん? 背表紙に直接手書きしたいから、紙だと気持ち的に書きやすくなるんだよね。ハードルが下がるというか。
僕がひとり暮らしをしてたときから愛用してたバスタオルにあっさりハサミを入れて雑巾にしてくれた人が「ハードル」もなにもないでしょう。
そんなことあったっけ(笑)
ありました。まあ、紙だとペンを選ばないから、書くなら紙がいいか。でも直接書き込まなくても、上からインデックスシールでも貼ればいいような気もするけど。
だめだめ、それじゃ面倒くさい。「書く」「(台紙から)剥がす」「貼る」って、3つもアクションあるじゃん。「書く」だけにしたいんだよ。
そういうものですか。
あと、表紙にスケジュールを書き込めるスペースがあるのね。今後の予定を書いてもいいし、進捗でもいいんだけど、プロジェクトを進めながら書き足していくことになるじゃん? そのたびにシールをちまちま貼ったり剥がしたりするより、書いちゃった方が絶対ラクだよ。
予定通りに進む仕事なんてないもんね。それが働く面白さでもある。でも、書き間違えたときは?
それが味になるじゃん! 書き間違えたところも含めて格好いいんだよ。
金言いただきました。たしかにね。仕事の過程を刻んでいける感じがいいね。
でしょ? だからそれを見越した上で、紙にしたんだよ。直接書くのが味になるような質感の紙を探してきたの。
紙は紙でも、何ていう名前なの?
コートボール紙だね。お菓子のパッケージとかにも使われる、わりと馴染みのある紙だよ。
ああ、あれね。お菓子の箱は薄くてペラペラしてるイメージやけど、本当にあれと同じ?
実は今回、合紙してるんだよね。
ああ。
試作の段階でいろんな友達やデザイナー仲間に見てもらったんだけど、「中に書類を入れたまま持ち歩きたい」って意見があって。持ち歩くにはコートボール紙だけだと弱いから、他の紙を貼り合わせることにしたの。段ボールなんだけど。
コートボールと段ボールの2枚で1枚になってるのか。なるほど、だから強度があるんやね。表紙を叩くと「コンコン」って音がする。
書類を保護して、そのまま持ち歩くことを考えると、十分な硬さに仕上がったと思う。
持ち歩くとクラッチバッグにもなる、みたいな?
それは言いすぎ(笑)。まあでも、そんな感じだよね。
ちょっと今、想像してみた。「WORKERS'BOX」だけ手に持って、颯爽とタクシーに乗って、そのまま打ち合わせに行くのって格好よくない? だって必要な書類は中にぜんぶ揃ってあるから、実質これだけで済んじゃうし。
そうだね。
設計事務所の人が図面を丸めた筒を肩から掛けて、自転車で移動してたりするやん。ああいうの、ちょっと憧れるなあ。いかにもその職業らしいって感じが。
ライターだって、それっぽいモノあるんじゃないの?(編注:松岡は元フリーライターです)
強いていえばボイスレコーダーかな。でも小さいから目立たないし。
なに、目立ちたいわけ?
そうじゃないけど、とくに駆け出しのころは実力がないから、せめて存在感を出したかったというか。あの、美容師さんがハサミやクシを入れて腰に巻いてるベルトがあるでしょ。
うん。
あれと同じようなのを買って、腰に巻いてボールペンとメモとボイスレコーダーを差しこんで、名刺もそこに入れちゃって、自分なりの「ライタースタイル」で取材の仕事をしたことがあった。やっぱり恥ずかしくて、すぐやめたけど。
でしょうね(笑)
とにかく話を戻すと、「WORKERS’ BOX」ひとつで格好よくなれるんじゃないか、と。
単純に持ち物が少ないと格好よく見えるよね。
潔い感じがするからかな。
あ、あともうひとつあった、紙にこだわった理由。
ほう。
中に入れる書類も、基本的にぜんぶ紙でしょう。だからプロジェクトが終わって、もう書庫にアーカイブしておく必要もないとなったら、ファイルごと古紙として捨てられるんだよね。
な、なるほど! 書類も入れたままリサイクルできると。
プラ製の差し込みファイルに入れた書類だと、一枚ずつ抜いて捨てなくちゃいけないでしょう。ファイルと分別もしなくちゃだし。でも中も外もどちらも紙なら、同じ古紙になる。
開いて閉じてしまうだけ、なんならそのまま捨てられる、と。なるほど、それは合理的やね。まさか捨てるときのことまで考えてたとは。
ものぐさのなせるワザでしょ(笑)
はじめに「紙は安く見られる」って話があったけど、実際、安い紙というのがあって。よく言えばコストを調整できるってことなんだよね。
ああ。使う紙によって高くもできるし、安くもできる。
で、「WORKERS’ BOX」はできるだけ手頃な価格にしたかったの。
なんで?
たくさん使いたいからだよ。プロジェクトごとに使うから、一冊や二冊じゃ全然足りない。プロジェクトをたくさん抱えてる人とか、どんどん増えていく人が使うとなれば、その分出費もかさむだろうし。だから一冊あたりの原価をできるだけ下げたかった。
それはちょっと分かるなあ。ファイルにしても箱にしても、見た目をきれいに揃えたいから、できるだけ同じもので統一したい。でも1個あたりいくらかな、と考えると割高なものは手が伸びにくい。
「WORKERS’ BOX」に関しては、値段を気にせずにたくさん使ってもらいたいのね。プロジェクトごとに一冊使うから、使いまわすものでもないし。手書きも躊躇しないで、どんどん書き込んでほしい。
そのために紙の調達費をできるだけ抑えたわけね。
でもコストは下げたけど、全然安っぽくないからね。「安い」と「安っぽい」は違うから。この手触りは、わたし的には最高。
うん、この触った感じは僕も気に入った。印刷されてるロゴにもツヤがあって高級感があるし。合紙してるから強度も保たれてるしね。紙のメリットとデメリットをよく考えて工夫されてると思う。
おそろしい数の試作を繰り返したからねえ。ただの厚紙から始まって、最終形にたどり着くまで長い道のりだったなあ。
で、ズバリいくらで販売する?
・・・今、最終試作が手元に届くのを待ってるのね。一か所、修正を加えたから、それを見て決定しようか。
次回までお預けですか。
これで最後にするから! もう試作はこれでおしまい。いかにも段ボールそのままな内側を、ちょっと格好よく改良したんだよね。
というわけで、次回が最終回です。
2024.5.27 update
2017.8.18 published
開発秘話