Story

なぜモノは片づかないのか

WORKERS'BOX 開発秘話 【第3回】

モノって、なぜ散らかるんでしょうね。モノって、なぜ片づかないんでしょうね。

ときめくか、ときめかないかで「捨てる」「残す」を区分けできる私物と違って、お仕事の書類や小物は捨てたくても捨てられず、上手く付き合っていくしかありません。整理整頓が苦手なみなさん、どうされてますか。職場で煙たがられていませんか。

誰でもデスクが片づき、仕事に集中できるワークツール「WORKERS'BOX」を発売するにあたって、ハイモジモジの松岡と松田が「なぜそれをつくったのか」を語り明かしました。

ほんと、この商品をつくるまではわたしたちも「お片づけ問題」が切実だったのです。

欲しいツールがなかった

松岡です。

松田です。

前回、書類をプロジェクトごとにまとめるという「世紀の大発明」をされた松田さんですね。

やめて（笑）

自分にとって「これだ！」と思えるツールがなかった、って言ってたけど、市販のファイルで試してみたものはあるの？

初めは普通に、よくあるポケット式のリングファイルで試してみた。でもそんなに量が入らないし、ファイル自体に重みがあるから全体が重たくなってくるし、ポケットに一枚一枚入れていくのが面倒だった。

パラパラめくれて気持ちいいし、閲覧性は高いけどね。

プロジェクトが終わったあとならいいけど、進行中だと書類が増えたり減ったり、順番を入れ替えたりするじゃん。そのたびにポケットから出し入れするのは、わたしには向いてなかった。

なるほど。

そもそもパンチ式が論外ね。いちいち紙に穴を開けるのが面倒くさいし、パチンって留めるところで指をはさみそうになる。ていうか、はさんだことある。

あー、地味に痛いやつ。

それ以来、パンチレスもダメ。シルバーの留め具を見るたびに「ヒイイッ」てなる。

いろいろあるのね（笑）

一番カンタンだったのは、シンプルなクリアファイル。これに関連資料をどんどん差し込んでいった。

これで十分っぽいけど。僕もこういうやり方してるよ。

ただね、クリアファイルって差し込み口が開いてるから、書類がバーッと落ちちゃうんだよね。

ああ。たしかに角度を油断すると、中身をぶちまけちゃうことあるね。

しかも背表紙がないじゃん。立てて並べたときに、どのファイルにどの書類が入ってるか分からないのね。

言われてみればたしかに。背面がないとラベルも貼れないしね。

たとえオモテ面に貼ったとしてもさ、指で一旦取り出さないと何のファイルか分からないでしょ？

そうね。僕は立てずに平置きで重ねちゃうけど、そうすると下の方のファイルの存在を忘れがちになる。管理の面ではもう一声ほしいね。

でしょう。とにかく「これ！」ってモノがないんだよ。あれば買って使うんだけど。

あれは？　よく百均とかでも売ってるプラケース。あれなら立てて並べられるし、背面にラベルを貼れなくもない。うちも以前はこのケースに家電の取説とかまとめてた。

うーん。

だ、だめですか先生。

まず、厚みがあるでしょ。わたしの仕事の場合、ここまで分厚くなくていいんだよね。

大は小を兼ねる、わけにはいきませんか。

同時進行してるプロジェクトは常に複数あるからね。イスに座ったまま書類をすっと手に取りたいから、どうしても机に並べたい。なのにこんなに分厚いのを5つも6つも並べたら、机があっという間に狭くなるじゃん。

圧迫感もあるしね。それなら、もう少し薄いのにすれば？　探せば売ってそうだけど。

うーん。そもそも「これを何冊も机に並べたいか？」っていう。

あ、見た目的に？　美観を損ねる的な？

プラスチックだし、なんか、もたっとするじゃん。デザインの仕事をするテンションには正直ならないかなあ。

自分が欲しいものをつくる

なるほど、「欲しいものがない」というのはよく分かりました。

だから自分でつくるしかなかったの。それを商品にするとか考える前に、そういうツールがわたしに必要だったんだよね。

その気持ち、よく伝わってたよ。だから今回、僕はあまり口出ししないようにしてた。純粋に「自分が欲しいもの」をつくってもらいたかったから。

うん。

会社としても8年目で、ヘンに知恵もついちゃって。「こうすれば売れる」「こうすればお店で目立つ」みたいなことから考えるクセがついちゃってたからね、最近は。

もちろんそれも大事なんだけど、本来は順序が逆かもね。

うちの姿勢はマーケットイン（顧客のニーズに沿う）じゃなく、プロダクトアウト（自分たちの思いを形にする）だからね。みんなの意見を聞きすぎず、あくまで自分たちがつくりたいものをつくる。

つくったものが「きっとみんなも欲しいはず」って信じてる。

すべての働く人のために

というわけで、そろそろ今回の新製品を解説してもらっていいですか。

もちろん。ただ、最終サンプルがまだ届いてないのよ。手元にあるのはまだ試作。

ズコー！

もう、完全にわたしが悪いんだけど。外注先の担当者さんに「この仕様で確定します」って伝えてから、さらに3回も改良をお願いしてるから。

さすがに怒られるで。

いや、もう、ほんとゴメンナサイ（笑）

今回めっちゃ試作してもらったよね。試作の回数で言ったら、ハイモジモジ史上最多じゃない？

かもしれない。見て、この試作の山。上にいくほど最新版。

圧巻やね。それだけ、こだわり抜いたってことでもある。

だって、わたし自身が使いたいものだからさ。頭の中で「欲しいもの」ができあがってるから、ぜったい妥協したくなかったの。

工場にも見学させてもらいに行ったしね。

よく歓迎してもらえたよね。何回も何回も何回も試作をお願いしちゃって、出入り禁止になってもおかしくなかったかも。

その情念を、別角度からご覧ください。

ほんとはさらに5冊くらいあるんだけど、ま、いっか。

十分伝わりました（笑）

まあでも、あとは微調整のレベルだから、この段階でもどういう製品なのか説明できるよ。

じゃあ、次の回からお願いします。その前に商品名とロゴだけでも正式に発表しておこうか。ここまで読んでくださった方のためにも。

そうだね。商品名は「WORKERS' BOX」です。ワーカーズ・ボックスと読みます。

当初のコードネームは「PROJECT BOX（プロジェクト・ボックス）」だったけど、松田のようなデザイナーだけじゃなく、すべての働く人にとってのスタンダードになればと思い、このようにネーミングしました。

第4回「開いて閉じて、しまうだけ」

2024.5.27 update
2017.7.21 published