【徹底討論】

なぜモノは

片づかないのか

WORKERS'BOX 開発秘話



【第1回】なぜモノは片づかないのか
【第2回】だからボックスをつくった
【第3回】自分自身が欲しかったから
【第4回】開いて閉じて、しまうだけ
【第5回】なぜ紙製にこだわったのか
【第6回】そして書類の住所ができた





ハイモジモジ松岡 松岡です。


ハイモジモジ松田 松田です。


ハイモジモジ松岡 開いて、閉じて、しまうだけ。「WORKERS'BOX」の仕組みはよく分かりました


ハイモジモジ松田 カンタンでしょ。







ハイモジモジ松岡Macの「デスクトップを複数作れる機能」にも近いのかな。横にスライドさせて画面を切り替える、みたいな。


ハイモジモジ松田え、そんなことできるの?


ハイモジモジ松岡トラックパッドで3本指をスライドさせるとできるよ。


ハイモジモジ松田し、知らなかった。わたしの方がMac歴長いのに。


ハイモジモジ松岡画面をスライドさせると気分もガラッと切り替わるから、次の仕事のスイッチが入りやすくなるよ。それこそプロジェクトごとに画面を分けたら便利。


ハイモジモジ松田こんど試してみよう。とにかく「プロジェクトごと」に分けるのは、アナログでもデジタルでも便利ってことだよね。



なぜ紙製にこだわったのか



ハイモジモジ松岡 ところでこの「WORKERS’ BOX」だけど、なんで紙製なの? 別の素材でも作れたような気もするけど。


ハイモジモジ松田紙じゃない方がよかった?






ハイモジモジ松岡そうじゃないけど、紙って見くびられがちやん? 実は他の素材よりも意外にコストがかかっていたりするのに「なんだ紙か」って思われやすいというか。


ハイモジモジ松田紙もピンキリなんだけどね。あきらかに安っぽい紙もあれば、もはや紙と呼べないようなテクスチャーの特殊紙もある。


ハイモジモジ松岡 結婚25周年を銀婚式って言うでしょ。あれって1周年から呼び名があって、金とかエメラルドとかプラチナとかいろんな素材の名前が安い順に付けられてるんやけど、なんと一年目は「紙婚式」なのよ。紙が一番安いんかい、とは思ってた。


ハイモジモジ松田金属に比べると、まあねえ(笑)


ハイモジモジ松岡 これを命名した人に訊きたい。「紙はそんなに安いですか」







ハイモジモジ松田紙業界の人だっけ?


ハイモジモジ松岡 違うけど、この場を借りて代弁してみました(笑)


ハイモジモジ松田わたしはとにかく紙の質感が好きなんだよね。指先に手触り感があるじゃん。好きな紙はずっと触っていられる。


ハイモジモジ松岡プラスチックのケースじゃテンションが上がらない、って言ってたね。


ハイモジモジ松田そう。やっぱり好きなんだよ紙が。見た目も含めて。


ハイモジモジ松岡個人的な好みで今回は紙製にこだわった、と。


ハイモジモジ松田 もちろん、ちゃんとした理由もあるよ。紙って、気軽にペンで書けるじゃん? 背表紙に直接手書きしたいから、紙だと気持ち的に書きやすくなるんだよね。ハードルが下がるというか。


ハイモジモジ松岡僕がひとり暮らしをしてたときから愛用してたバスタオルにあっさりハサミを入れて雑巾にしてくれた人が「ハードル」もなにもないでしょう。


ハイモジモジ松田 そんなことあったっけ(笑)







ハイモジモジ松岡ありました。まあ、紙だとペンを選ばないから、書くなら紙がいいか。でも直接書き込まなくても、上からインデックスシールでも貼ればいいような気もするけど。


ハイモジモジ松田 だめだめ、それじゃ面倒くさい。「書く」「(台紙から)剥がす」「貼る」って、3つもアクションあるじゃん。「書く」だけにしたいんだよ。


ハイモジモジ松岡そういうものですか。


ハイモジモジ松田 あと、表紙にスケジュールを書き込めるスペースがあるのね。今後の予定を書いてもいいし、進捗でもいいんだけど、プロジェクトを進めながら書き足していくことになるじゃん? そのたびにシールをちまちま貼ったり剥がしたりするより、書いちゃった方が絶対ラクだよ。


ハイモジモジ松岡予定通りに進む仕事なんてないもんね。それが働く面白さでもある。でも、書き間違えたときは?


ハイモジモジ松田それが味になるじゃん! 書き間違えたところも含めて格好いいんだよ。


ハイモジモジ松岡金言いただきました。たしかにね。仕事の過程を刻んでいける感じがいいね。


ハイモジモジ松田でしょ? だからそれを見越した上で、紙にしたんだよ。直接書くのが味になるような質感の紙を探してきたの。







ハイモジモジ松岡 紙は紙でも、何ていう名前なの?


ハイモジモジ松田コートボール紙だね。お菓子のパッケージとかにも使われる、わりと馴染みのある紙だよ。


ハイモジモジ松岡ああ、あれね。お菓子の箱は薄くてペラペラしてるイメージやけど、本当にあれと同じ?


ハイモジモジ松田実は今回、合紙してるんだよね。


ハイモジモジ松岡 ああ。


ハイモジモジ松田 試作の段階でいろんな友達やデザイナー仲間に見てもらったんだけど、「中に書類を入れたまま持ち歩きたい」って意見があって。持ち歩くにはコートボール紙だけだと弱いから、他の紙を貼り合わせることにしたの。段ボールなんだけど。







ハイモジモジ松岡コートボールと段ボールの2枚で1枚になってるのか。なるほど、だから強度があるんやね。表紙を叩くと「コンコン」って音がする。


ハイモジモジ松田書類を保護して、そのまま持ち歩くことを考えると、十分な硬さに仕上がったと思う。


ハイモジモジ松岡 持ち歩くとクラッチバッグにもなる、みたいな?


ハイモジモジ松田 それは言いすぎ(笑)。まあでも、そんな感じだよね。


ハイモジモジ松岡ちょっと今、想像してみた。「WORKERS'BOX」だけ手に持って、颯爽とタクシーに乗って、そのまま打ち合わせに行くのって格好よくない? だって必要な書類は中にぜんぶ揃ってあるから、実質これだけで済んじゃうし。







ハイモジモジ松田 そうだね。


ハイモジモジ松岡設計事務所の人が図面を丸めた筒を肩から掛けて、自転車で移動してたりするやん。ああいうの、ちょっと憧れるなあ。いかにもその職業らしいって感じが。


ハイモジモジ松田ライターだって、それっぽいモノあるんじゃないの?(編注:松岡は元フリーライターです)


ハイモジモジ松岡 強いていえばボイスレコーダーかな。でも小さいから目立たないし。


ハイモジモジ松田 なに、目立ちたいわけ?


ハイモジモジ松岡そうじゃないけど、とくに駆け出しのころは実力がないから、せめて存在感を出したかったというか。あの、美容師さんがハサミやクシを入れて腰に巻いてるベルトがあるでしょ。


ハイモジモジ松田 うん。


ハイモジモジ松岡 あれと同じようなのを買って、腰に巻いてボールペンとメモとボイスレコーダーを差しこんで、名刺もそこに入れちゃって、自分なりの「ライタースタイル」で取材の仕事をしたことがあった。やっぱり恥ずかしくて、すぐやめたけど。


ハイモジモジ松田 でしょうね(笑)




そのままリサイクルもできる



ハイモジモジ松岡とにかく話を戻すと、「WORKERS’ BOX」ひとつで格好よくなれるんじゃないか、と。


ハイモジモジ松田単純に持ち物が少ないと格好よく見えるよね。


ハイモジモジ松岡潔い感じがするからかな。


ハイモジモジ松田あ、あともうひとつあった、紙にこだわった理由。


ハイモジモジ松岡 ほう。


ハイモジモジ松田中に入れる書類も、基本的にぜんぶ紙でしょう。だからプロジェクトが終わって、もう書庫にアーカイブしておく必要もないとなったら、ファイルごと古紙として捨てられるんだよね。


ハイモジモジ松岡な、なるほど! 書類も入れたままリサイクルできると。


ハイモジモジ松田プラ製の差し込みファイルに入れた書類だと、一枚ずつ抜いて捨てなくちゃいけないでしょう。ファイルと分別もしなくちゃだし。でも中も外もどちらも紙なら、同じ古紙になる。


ハイモジモジ松岡開いて閉じてしまうだけ、なんならそのまま捨てられる、と。なるほど、それは合理的やね。まさか捨てるときのことまで考えてたとは。


ハイモジモジ松田ものぐさのなせるワザでしょ(笑)




コストをできるだけ安く



ハイモジモジ松田はじめに「紙は安く見られる」って話があったけど、実際、安い紙というのがあって。よく言えばコストを調整できるってことなんだよね。


ハイモジモジ松岡ああ。使う紙によって高くもできるし、安くもできる。


ハイモジモジ松田で、「WORKERS’ BOX」はできるだけ手頃な価格にしたかったの。


ハイモジモジ松岡 なんで?


ハイモジモジ松田 たくさん使いたいからだよ。プロジェクトごとに使うから、一冊や二冊じゃ全然足りない。プロジェクトをたくさん抱えてる人とか、どんどん増えていく人が使うとなれば、その分出費もかさむだろうし。だから一冊あたりの原価をできるだけ下げたかった


ハイモジモジ松岡それはちょっと分かるなあ。ファイルにしても箱にしても、見た目をきれいに揃えたいから、できるだけ同じもので統一したい。でも1個あたりいくらかな、と考えると割高なものは手が伸びにくい。


ハイモジモジ松田「WORKERS’ BOX」に関しては、値段を気にせずにたくさん使ってもらいたいのね。プロジェクトごとに一冊使うから、使いまわすものでもないし。手書きも躊躇しないで、どんどん書き込んでほしい。


ハイモジモジ松岡そのために紙の調達費をできるだけ抑えたわけね。


ハイモジモジ松田でもコストは下げたけど、全然安っぽくないからね。「安い」と「安っぽい」は違うから。この手触りは、わたし的には最高。







ハイモジモジ松岡うん、この触った感じは僕も気に入った。印刷されてるロゴにもツヤがあって高級感があるし。合紙してるから強度も保たれてるしね。紙のメリットとデメリットをよく考えて工夫されてると思う。


ハイモジモジ松田おそろしい数の試作を繰り返したからねえ。ただの厚紙から始まって、最終形にたどり着くまで長い道のりだったなあ。


ハイモジモジ松岡で、ズバリいくらで販売する?


ハイモジモジ松田・・・今、最終試作が手元に届くのを待ってるのね。一か所、修正を加えたから、それを見て決定しようか。


ハイモジモジ松岡次回までお預けですか。


ハイモジモジ松田これで最後にするから! もう試作はこれでおしまい。いかにも段ボールそのままな内側を、ちょっと格好よく改良したんだよね。


ハイモジモジ松岡というわけで、次回が最終回です。





第6回「そして片づけが楽しくなった」




STORY

開発秘話

A4

なぜモノは片づかないのか

すべてはここから始まりました。発売当初にSNSを通じてたくさん読まれ、共感を呼んだ開発エピソード。

WIDE

まだモノは片づかないのか

幅広タイプもほしい事情がありました。およそ2年後に発売された「WIDE」の開発エピソード。

STAND

専用スタンドを作ってみたら

ブックエンドにもなる「STAND」の開発エピソード。開発担当のデザイナーがその経緯を語り明かしました。

MINI

なぜ名刺は片づかないのか

名刺は意外と片づかない。そんな問題意識から始まった名刺サイズ「MINI」の開発エピソード。

LINE UP